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春待ちに華やぐ 阿蘇路を訪ねて 高森町


早朝からもうもうと湯気が立ちこめる仕込み蔵。酒米の甘い香りが漂います



うま味育てる酒の寒造り 米を蒸す湯気で蔵は活気

3月16日まで開催中の「新酒まつり」にあわせてつくられた「春待酒」のほか、人気のラインアップ
 
「今年は酒米のできもよく、いいお酒ができています」と山村さん


発酵中の酒樽。約1カ月工程をへて、お酒が出来上がります
 
「山村酒造」のギャラリーには珍しい漢字のタイプライターなどもありました
 
蔵の傍らには、酒の仕込み水が勢いよく流れ出ていました


柿渋が塗られ黒光りする階段は、麹室へと続いています。蒸し上がったお米を持った蔵子たちが駆け上がり、蔵の中は活気に満ちています
 
明治期に多くの家を焼失させた高森町の大火。「萬延蔵」は土蔵造りだったため、幸いにして被害を免れました↑↓


 透きとおった空気に冬の名残を感じる朝。車を走らせ、近づいてきた阿蘇外輪の山々は、うっすらと雪化粧をしています。まだギュッと丸くなったままの桜のつぼみは、まるで春の訪れを待っているかのようです。
 誰よりも早く春の予感を感じたくて、「山村酒造」を訪ねました。万延元年(1860)の創業以来、阿蘇の水と米を使った清酒を造り続ける山村酒造ではこの日、酒造りの真っ最中。
 冬の寒さがゆっくりと酒のうま味を育てる「寒造り」の製法で、毎年11月から3月にかけて、酒の仕込みが続きます。
 同社の専務で企画広報部長を務める山村弥太郎さん(38)に、蔵を案内していただきました。仕込み水が絶え間なく湧き出ている一角には、榊(さかき)が祭られています。「酒仕込みに使っているこの水は、外輪山系の伏流水です」。
 ひしゃくですくって一口飲んでみると、軟らかな口当たりの水がすーっと喉の奥へ消えていきます。
 朝の4時から酒米を蒸す作業がはじまるこの時期、まだ8時台だというのに蔵のなかは蒸気でポカポカとあたたかく、一面がお米の甘い香りで満たされています。
 外がマイナスに近い気温の日も、麹室は30度以上になるそうで、半袖姿の作業員たちの額にはじんわりと汗がにじんでいました。
 タンクを上からのぞき込むと、まっ白い液体からふつふつと気泡があがり、耳を澄ませるとお酒のささやきが聞こえてきそうです。
 「酒って“つくる”というより、“育てる”に近い感覚。僕らにできるのは、麹や酵母が働きやすい環境を整えてあげることくらいです。そう考えると酒造りは工業ではなく、農業だなとつくづく思います」。
 今では作り手も地元の人ばかりになりましたが、昔は、豊後(大分)から杜氏が蔵子を引き連れ、住み込みで作業をしていました。子どもの頃は毎晩、寝る前に蔵子の部屋へ「おやすみなさい」とあいさつに行くのが日課だったそうです。
 「部屋では大人たちが毎晩、楽しそうにお酒を飲んでいて、そこから酒に対する憧れが生まれた気がします。若者の酒離れが言われて久しいですが、子どもに憧れられるような飲み方をするのも大人の役割だと思います」。


問い合わせ
■山村酒造
住/阿蘇郡高森町高森1645
TEL.0967(62)0001
営/9時~17時
休/不定
※蔵の見学は要予約
※新酒まつりは明日(3月16日)まで開催されています
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※各情報は掲載時のものです。料金や内容が変わっている場合もあります。
  あれんじ気まま旅
Vol.96(2014.3.15)掲載
行きつ戻りつしていた寒さもようやく落ち着きはじめ、少しずつ春の気配を感じます。凛々しい根子岳が見守る高森町(阿蘇郡)には、受け継がれる営みと、春を迎える準備に忙しい里人たちの姿がありました。

文=木下真弓 写真=森賢一 表紙=南阿蘇鉄道の高森踏切から望む根子岳



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