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海と山に満ちる 冬の華やぎ 芦北町


冬のさなか、冷水に手をさらす紙すき作業の苦労を、
できあがった紙の美しさが報いてくれます


紙すきの里でもらった 〝山土産〟のぬくもり

銅山地区の紙すき作業場近辺の風景。すぐそばを流れる吉尾川をはじめとする町内のホタル保護のため、平成13年に「芦北町ほたる保護条例」が制定されました
 
作業小屋のすぐ脇に茂る和紙原料のカジノキ。今後、近隣に約200本を植樹する計画です

戸数10戸あまりの銅山地区は、全体が一つの家族のよう。左から「大河内紙保存会」の草野義雄さん(63)、馬場泰子さん(66)、会長の水口宣之さんと奥さんのタエさん(65)



天然の防虫効果も期待できて丈夫な大河内紙は、米俵の内袋(写真)や干物・大豆の保存袋に重宝された、生活密着型の製品です
 
できたての卒業証書用紙。芦北町立の小中学校を卒業する子どもたち約290人がこの卒業証書を手に巣立っていきます


新しい特産品にと3サイズを試作中の大河内紙製草履(左端は子ども用)。きよらかな白が目に清々しく、履くほどにしなやかに足になじみます
 
草履を試作した今村加代美さん(45)。編み上げの基本単位になるひも状のパーツ作りから手探りで始めて完成させました
 
芦北町内の大関・国見水源の水と町産米で仕込んだ焼酎「葦分(あしきた)」と「夢あしきた」。ラベルに大河内紙が使われています(「道の駅たのうら」などで販売)


  稜線の形に切り取られた冬空が、山あいの銅山(かなやま)地区(芦北町大岩)の上に広がります。吐く息が白く散る冬の朝に迎えてくれたのは、あたたかなたき火でした。
 ベールのようにうっすらと広がる白煙が、きりりとした山里の光景に美しく紗(しゃ)をかけます。
 「この時期は、山の牡鹿が鳴く声で目が覚むっとですよ」と話すのは、水口宣之さん(71)です。その手は、来春に芦北町内の小中学生に渡される卒業証書用の和紙作りにかかりきり。乳白色の液の中で漉桁(すげた)がサーッ、サーッと数回往復するたびに、やわらかな白をたたえた紙が次々とすきあがります。
 この地で作られる和紙は、古くから"大河内紙(おかわちがみ)"としてその名を知られていました。昭和30年代に一度途絶えましたが、再興を目指す有志の熱意で平成10年に復活。昔ながらのやり方にこだわる素朴な風合いが再び注目されています。
 そんな紙すきもさることながら、作業小屋での一服がなんとも楽しくて。干しイモとソラマメを炊き合わせた"豆ガライモ"などをいただきながら、話題は出没する動物たちのことにまでおよびます。
 「この時期、イノシシはイモば掘り返して食べるとたい。なんならイノシシの炭火焼きば食べていかんね?」
 残念ながら時間が許さずご辞退しましたが、「な~ん、ここに来っときゃ、丸々一日予定ば空けて来にゃんよ~(笑)!」
 初対面と思えないほど話が弾むのは、自然と互いの肩を寄せ合う小屋の内部で、心地よいほの暗さに包まれているからでしょうか。
 豆や栗など秋の山里の土産を"山土産(やまづと)"と呼びますが、こんな楽しいふれあいの記憶こそが、一番の山土産です。



●大河内紙は、「半日紙すき体験」が可能です(有料、要予約)
大河内紙および体験に関する問い合わせや申し込みは下記へ


問い合わせ
■大河内紙保存会
事務局:園川(芦北町役場) 
TEL.0966(82)2511(内線111)

>> 2 焼いても漬けても美味!この冬、豊漁のアシアカエビ
※各情報は掲載時のものです。料金や内容が変わっている場合もあります。
  あれんじ気まま旅
Vol.90(2013.12.21)掲載
リアス式海岸が続く沿岸部と、山ふところに抱かれた里が広がる内陸部。両者があいまってその魅力を高めているのが芦北町です。町を南北に貫くかつての薩摩街道で出合うのは、今も息づく古い町割りと家並み。そんな芦北が見せる魅力的な"冬の顔"が知りたくて一日ゆっくり訪ね歩いてみました

文=松田有美 写真=森賢一(グラフ) 表紙=佐敷川にかかる藍川橋



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