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青い海に にっこり 日本一のえびすさんの町 倉岳町

波ひとつない穏やかな海もひとたび風が吹けば、荒れ狂います。
海辺の暮らしは、それを受けいれることでもあります


風の通り道、棚底の工夫 美しく積まれた防風石垣

松本さんのご自宅にある、野面積みの石垣。「熊本城のようですね」と声を掛けられることもあるそう
 
石垣の間にぽっかり開いた穴は「こぐり」と呼ばれる用水路。今も現役で田畑に水を送っています


背丈よりもはるかに高い石垣のある家に暮らす松本さんご夫妻。左から勇子さん、喜和さん
 


松本さんのご自宅では、
手塩に掛けた大輪菊が出迎えてくれました



「ゲートボールの帰りに、虫のついとらんか見に来たっです」と吉森さん
 
棚底地区は倉岳へ続く道を境とし、扇状に広がる特殊な地形。「風は強かけど、この地形のおかげで水害を免れた」と松本さん


 倉岳の海は、凪(な)いでいました。滑らかな水面に晩秋の日が差し、宝石をちりばめたように輝きます。風がそよぐたびに漂う磯の香りに、心が和らいでいきます。
 倉岳町と御所浦島を結ぶフェリー乗り場のある棚底地区の入り江には、とてもゆっくりとした時間が流れています。その背後に倉岳と矢筈岳(やはずだけ、626m)が肩を並べてそそり立つ様子は、まるで兄弟が背比べしているようにも見えます。
 ところが、このおだやかな日常の風景が一変するときがあります。棚底地区の一角に建ち並ぶ、石垣の壁がその理由を伝えています。
 形も大きさもさまざまな自然石を積み上げた「防風石垣」と呼ばれるこの石の壁は、強烈な北風「倉岳おろし」から家を守るためのものです。小道に高い石垣がいくつもそびえ立つ光景はさながら、古い城下町や古代の遺跡のようでもあります。
 三方を石垣で囲まれた、松本喜和さん(73)のご自宅を訪ねました。一年中、しめ縄が飾られている天草特有の玄関先で話を聞かせてもらいました。
 「石垣も家も100年以上経っとるですな。こがんとば今、作ろうと思ったっちゃ作れんですよ、技術者もおらんし。親父が生きとりゃ、もう100歳ぐらいになっとですけど、そん人たちも誰が作ったか知らんかったもんな。江戸後期だろうとは言われとります」と松本さん。
 また、港から山手にかけて100基ほどある石垣群は、扇状に広がる斜面の片側だけに存在しているものだそうです。「反対側はそうなかとですけど、冬になるとこっち側は台風じゃなくても、しょっちゅう“あおきた”の吹いてくっとですよ。洗濯物も干されんし、ゴーゴーガタガタ音のして怖かですよ」と、妻の勇子さん(70)。
 このエリアでは倉岳おろしのことを、“あおきた”と呼ぶのだそうで「語源まではわからんですけど、北風が野菜の青もんば飛ばすけんでしょうかね」と松本さん。
 石垣群の間にある小さな畑でハクサイの手入れをしているおばあちゃんに会いました。吉森恵美子さん(84)は、ショウガやジャガイモ、ダイコン、ハクサイなど、旬の野菜を少しずつ栽培しています。
 「作っても作っても風ん吹けばダメになることもあっですけどね」と大切に育てている野菜を見ながら吉森さんは笑います。風の通り道を意識し、季節の移り変わりと向き合いながら暮らす人のやわらかな笑顔に、心がポッと温まります。

問い合わせ
■棚底歴史散策 町歩き
(天草市倉岳支所まちづくり推進課)
1人500円(中学生以上)2名より受付
※5日前までに要予約
TEL.0969(64)3111

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※各情報は掲載時のものです。料金や内容が変わっている場合もあります。
  あれんじ気まま旅
Vol.88(2013.11.16)掲載
うららかな小春日和に誘われて、海風ドライブ。天草最高峰の倉岳(682m)が見守る天草市倉岳町には先代の知恵に育まれた街並みと、互いを気遣い、生きる人々のほがらかな笑顔がありました。

文=木下真弓 写真=森賢一(グラフ) 表紙=棚底地区の防風石垣



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