生活情報紙「あれんじ」公式サイト

トップ最新号とバックナンバー読者プレゼント
海と寄り添う祈りの町 﨑津

チャプンチャプンと船の底を叩く、波音に誘われてトーヤを抜けると、民家のカケを見ることができます


入り江の町に漂う郷愁とぬくもり

「トーヤ」は漁船からの積み降ろしなどの際、海辺へ行き来するための生活路。国の重要文化的景観にも選ばれています
 
ヒオウギ貝で作られたカラフルな飾りが目に付きます

トーヤでのんびりくつろぐ野良猫たちも、崎津の風景のひとつ


壁面に描かれた模様は、長崎の左官職人が手がけたもの
 
観光客や地元のおばあちゃんらもふらりと立ち寄るマリン。廃缶で作った風車がくるくる回って、涼しげです
 
マリンのソフトクリームはなんと150円!


 青い空と海とが溶けあう、崎津の朝。民家の庭先では、真っ赤なハイビスカスが情熱の色を咲かせています。ピィーフューッ、ピィーフューッと、積乱雲を抱く夏空の中で大きく孤を描くのはトンビです。
 静かな入り江をなぞるように広がる、小さな漁村。肩を寄せ合うように家が立ち並び、どこから見ても屋根と屋根の間からは、集落のシンボルである崎津教会の尖塔が見えます。
 町のあちこちに、民家の間を縫うように海へとつながる、幾筋もの細い路地があります。「トーヤ」と呼ばれる、それぞれの家と海をつなぐ生活路です。現役で活躍する懐かしいポストや辻の陰で眠たそうな顔をする猫の表情といい、適度にほったらかされた風景に心が和みます。
 近年、この美しい漁村を訪れる人が増えていますが、観光地として構えない、こういう何気ない路傍にこそ、 津の魅力があるような気がします。潮が引いて、そして満ちる。ここにある営みは、自然のリズムと同じようにゆるやかで、おだやかなのです。
 崎津の中心部の通りには、お肉も並ぶ八百屋や、調味料から墓参り用品までそろうクリーニング店などが点在しています。
 通りにある「マリン」という店の「ソフトクリーム150円」の看板を見つけました。なんとも安い! その甘くなめらかな冷たさがのどを潤します。店内には缶ビールや焼酎パックなどが売られていました。 「うちはもともと漁具店だけど、毎月1日と15日にご年配の方が神棚に奉納するためのお酒が必要なんで販売しているんです」と福嶋円さん(60)。
 ソフトクリームを頬ばりながら、ふと辺りの家々のコンクリート壁を見渡すと、線で模様を描いたモダンなデザインがいくつもあるのに気づきます。聞けば、長崎の左官職人が手がけた細工だそうです。天草五橋が開通する前は、対岸の長崎・島原と似通った文化圏にあったようです。また、炭鉱やイワシ漁で栄えた昭和初期のころは、多くの人たちが崎津に集まり、料亭などが並ぶ歓楽街もあったと聞きます。
 海に面した家々に、海上にせり出すようにして竹やシュロで作られた”テラス“状のスペースがありました。これは「カケ」と呼ばれる、漁網の補修や魚や海藻などを干す作業場です。桟橋としても機能するなど、実用性を重視したスペースですが、ビール片手に夕涼みも似合いそう…などと、旅人の好奇心をくすぐる光景でもあります。


問い合わせ
■マリン
天草市河浦町崎津512
TEL.0969(79)0037
営/8時〜20時 休/なし
>> 2 世界遺産をめざす教会 漁を見守るマリア像

※本文中は、ウェブ制作の便宜上、「崎津」と表記しています。「崎」の表記は、正しくは、「山」ヘンに「立」「可」です。
※各情報は掲載時のものです。料金や内容が変わっている場合もあります。
  あれんじ気まま旅
Vol.81(2013.8.3)掲載
潮騒の音を聞きながら、海沿いの道を西へ、西へ。たどり着いたのは、おだやかな羊角(ようかく)湾をのぞむ漁港、崎津(天草市河浦町)です。そこには、人々が守り続けてきた祈りの歴史と、繰り返される日々の営みがありました。

文=木下真弓 写真=森賢一(グラフ) 
表紙=夕暮れの空に見える崎津教会の尖塔



海と寄り添う祈りの町 﨑津
入り江の町に漂う郷愁とぬくもり
世界遺産をめざす教会 漁を見守るマリア像
陽気な主婦の杉ようかん ワンコインで手軽にクルーズ
ふるさとの魅力を再発見 若者が育てる新しい名物

くまにちコム


このページのトップに戻る↑



掲載の記事、写真の無断複製・転載を禁じます
Copyright Kumamoto Nichinichi Shimbun