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高原に待ちわびた春が到来 波野

阿蘇に春を呼ぶ「野焼き」の風景(資料写真)


春の訪れとともに始まる 240年の伝統を誇る神々の舞

「けっこう古いお面が残っているんですよ」と見せてくれた神楽の面。見た目よりも軽いのですが、目の穴が小さく、これを着けて踊るのは難しそうです
 
「呼ばれればどこででも神楽を舞いますよ(笑)」と藤井文人さん(右)と楢木野霞さん

静かな山間にある「中江神楽殿」。毎月第1日曜日に開催される定期公演は無料で見学できます



「神楽殿」の横に鎮座する「荻神社」。杉木立に囲まれた本殿は、神聖な雰囲気を漂わせています
 


 野焼きで真っ黒になった山肌が、緑の草原になるまであと少し。昨年の九州北部豪雨で被害にあった波野ですが、少しずつ復旧も進み、道端に咲く山野草の姿が春の到来を告げています。
 中江地区の荻神社に奉納する「中江岩戸神楽保存会」では、毎月第1日曜日に催される定期公演が4月からスタートし、11月まで多くの観客を魅了します(10月は除く)。
 山が深くなるにつれ神秘的な風景に変わる中江地区。大分との県境近く荻岳の麓に、定期公演の舞台となる「中江神楽殿」があります。その隣には、1400年の歴史を持つ「荻神社」があります。神楽殿が出来るまではこの境内で神楽の奉納が行われていました。
 「冬の間はずっと練習。お祝いの席や他の地域の祭にも招かれますが、春から始まる定期公演の舞台はやっぱり特別ですよ」と、笑顔で迎えてくれた保存会楽長の藤井文人さん(66)。
 普段はひっそり静かな中江地区も、定期公演の日はお囃子の音と歓声で一気に華やぐそうです。一番人気のある演目は、アマテラスオオミカミの「岩戸開き」、スサノオノミコトのヤマタノオロチ退治「八雲払(やぐもばらい)」。
 迫力ある神々の舞に釘付けになったり、拍手で盛り上げたり。「神楽はけっこう自由が利くから、お客さんがノリが良いと、いつもより多く舞うんですよ」。臨機応変に観客に応えられるのも、熟練の舞手、囃子(はやし)方がそろっているからこそです。
 「中江岩戸神楽」の始まりは江戸時代末期。大分の御嶽神社に伝わる神楽を習い、地元で工夫を重ねて三十三座に構成されたと伝えられています。
 平成2年に県立劇場で披露された「中江岩戸神楽三十三座完全復元一昼夜公演」は多くの評判を呼びました。その後、「神楽殿」の完成と共に定期公演も始まり、神楽を中心とした村おこしが盛んになりました。
 「二日間に分けて上演しようとか、休憩を入れながらやろうとか。私たちも初めてだから、休み休みやろうと言ってたら、当時の鈴木健二館長が『江戸時代の人が一昼夜でやってたんだから、あなたたちもできるはず』と叱咤(しった)されてね(笑)」と、今でも昨日の出来事のように前会長の楢木野霞さん(87) は話します。
 「タバコも酒もやりまっせん」と、現役の舞手でもある楢木野さんは、神楽のために健康にも気を付けているそうです。
 「岩戸開き」を演じるには最低でも12人必要。しかし、現在の会員は16名と、後継者育成が課題です。
 「会社勤めの人もいるので、全員で通し稽古(けいこ)ができないこともあります。会員になりたいと、他の地域の方から申し出がありますが、中江神楽は地元の者だけで継承したいと考えているんです」と藤井さん。先人から受け継いだ地域の伝統を誇る気持ちが、素晴らしい舞台を生み出すのかもしれません。


問い合わせ
■中永岩戸神楽保存会
阿蘇市波野中江2606の2
問い合わせ 阿蘇市役所商工観光課
TEL.0967(22)3174
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※各情報は掲載時のものです。料金や内容が変わっている場合もあります。
  あれんじ気まま旅
Vol.73(2013.4.6)掲載
大分県との県境に位置する阿蘇市波野。「中江岩戸神楽」で知られるこの町は、国道57号から一歩入れば幽玄な山の風景が続きます。そこには、自然に寄り添う暮らしと素朴で温かい人情があります。やっと訪れた高原の春に導かれるように、町を巡ってみました。

文=廣木よしこ 写真=森賢一(グラフ)
表紙=スサノオノミコトの舞(中江神楽殿)



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