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小西行長が物資運搬を目的に整備した船場川。エノキの大樹が濃い陰を落とします
歴史の面影を映す 春の城下町 宇土市


古い石橋に往時をしのぶ 岸辺の蔵は新たなスポットに

船場橋のたもとにある古井戸は、江戸時代に轟水源から水を引いた「轟泉(ごうせん)水道」の最終地点にあたる井戸
 
白壁がまぶしい「うとん交流館・船場蔵屋敷」は船場橋間近の絶好のロケーション。トイレも気軽に利用でき、街歩き中の休憩にぴったりです。スイーツのテークアウトもOK


「船場蔵屋敷」内にある、開放的な窓際席。腰を降ろせば窓いっぱいに空・川・樹木が織り成す光景が広がり、いつまでも座っていたくなります
 
立岡自然公園周辺は、桜の名所。ことに夜桜の美しさは見事です


1日15食限定の“お野菜と発酵食のありがとうコース”(9品2500円)の一部。取材当日のメーン(手前)は、オートミールや豆腐を使ったヘルシーなハンバーグ=穀菜食カフェ&レストラン
 
2500円コースのデザート。この日は、りんごのコンポート、ココナッツミルクと豆乳を使ったタルト、ココアのケーキの3品盛り合わせ=穀菜食カフェ&レストラン


“マクロビ精進ありがとうコース”(1600円)のメーン、“マクロビおばんざい7品バリエ”。麩など体に優しい食材を使い、滋味深く食べごたえある品々=穀菜食カフェ&レストラン
「古い蔵の空気に守られている感じがする」「宇土の良さをここで案内したい」と話す「穀菜食カフェ&レストラン」の小山尚枝さん(交流館副館長)


 雨が上がって間もない船場橋(宇土市船場町)から見下ろす川面は、利休鼠(りきゅうねずみ)色。花曇りの空の下、古びた石のアーチ橋を囲む景色のすべてが、淡いグレーの陰りを帯びていました。そんな水彩画のような景色の中にたたずむ石橋の上を、真っ赤な荷箱を載せた郵便配達のバイクが一台、ツーっと勢いよく駆け抜けていきます。
 橋のたもとには、その由来を説明する陶製の案内板がありました。幕末に作られた船場橋は、当時の風情を今に伝える貴重な石橋です。説明文には昭和32年に同地点を撮影した写真が添えられ、そこには、橋のたもとの紙芝居に群がる子どもたちやおかっぱ頭の少女など、懐かしい昭和の光景が焼き付けられていました。
 川へと降りる古い石段が、ここが江戸から明治にかけて有数の船着場として繁栄したことを伝えています。物資を山と積んで船場川を遡(さかのぼ)ってきた船からこの石段を使って盛んに荷が揚げられたことでしょう。当時、岸には材木蔵や「船手(ふなて)奉行屋敷」などがずらりと並んでいたといい、荷揚げの男たちがせわしなく行き交う姿が目に浮かぶようです。
 そんな時代の面影を映す川辺の光景に、若い日、心のやすらぎを覚えていた一人の女性がいました。それが、「船場蔵屋敷」の中にある「穀菜食カフェ&レストラン」を2月に開いた小山尚枝さん(55)です。「宇土市外から嫁いで間もない頃は、まだお友達も少なくて…。船場橋界わいを眺めるひとときが、寂しさを慰めてくれました」と小山さん。
 いつかこの風景の中に居場所を持ちたいという若い日の夢が、「不思議なご縁でかないました」とほほえみます。
 レストランのコンセプトは、地産地消の”お野菜と発酵食“。「地域の交流や観光の拠点に」と、地元有志のあつい心でよみがえった築140年の蔵「うとん交流館・船場蔵屋敷」内にあり、あえて残したという建築当時の柱や土壁の空間があたたかさを醸し出しています。街歩きに役立つ観光パンフレットがそろい、地元作家の作品展示やジャズライブなども不定期に開催。4月からは物産販売の”マルシェ“もスタート。この春できたてのイチ押しスポットです。


問い合わせ
■うとん交流館・船場蔵屋敷内穀菜食カフェ&レストラン
宇土市石小路町113
TEL.0964(26)1008
営/11時半〜15時、15時〜17時(ティータイム)、18時〜OS20時30分 
休/不定
>> 2 いのちの輝きが宿る染物 復活した宇土雨乞い大太鼓
※各情報は掲載時のものです。料金や内容が変わっている場合もあります。
  あれんじ気まま旅
Vol.72(2013.3.16)掲載
中世から近世にかけて、宇土氏・名和氏や小西行長が治め、江戸時代には細川家の支藩が置かれた宇土(宇土市)。閑静な城下町の面影を残す川筋や街並みをたどれば、春の息吹があちこちに見受けられます。ゆっくり散策するほどに、離れがたい風情がそこにありました。

文=松田有美 写真=森賢一(グラフ) 
表紙=かつて船着場として栄えた船場橋のたもと



歴史の面影を映す 春の城下町 宇土市
古い石橋に往時をしのぶ 岸辺の蔵は新たなスポットに
いのちの輝きが宿る染物 復活した宇土雨乞い大太鼓
技は寸分も惜しみなく 風情はあくまで奥ゆかしく

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