生活情報紙「あれんじ」公式サイト

トップ最新号とバックナンバー読者プレゼント
心ぬくもる冬晴れの島旅 本渡

こぢんまりとした館内ですが、長い間、天草の人たちに愛された歴史が刻まれています。
両サイドの壁には高倉健さん主演の映画のポスターが張り巡らされてあります


あのころの映画館に会えます 昭和の姿そのままの本渡第一映劇

タイルの壁に飾られたステンドグラスは昭和らしいデザインです
 
『本渡第一映劇』の売店では、毎週火曜日においしい手作りパンが販売されます。ドアの向こうからホール・エコーがもれて、懐かしい映画館の匂いがします


昨年末に上映された、天草を舞台にした映画作品。銀天街のシャッターの壁に貼られていました
 
「昔の邦画作品の素晴らしさを伝えていきたい」と語る同館代表の柿久和範さん。天草が舞台となった映画作品の上映も行いました
 
『本渡第一映劇』の近くにある祇園橋。国指定重要文化財


 この小さな旅でいつも心が向いてしまうものは、懐かしい匂いがする場所です。昔ながらの路地や建物、古びた看板…。それは、土地にゆかりのある人たちの暮らしを語る証人のように思えてなりません。過疎化が進む町では「昔は良かったけどね…」とさみしい声が聞こえてきますが、無駄に新しいものへと切り替えなかった分、今にして希少な”宝物“が存在するのです。だから、訪れた人の誰もが郷愁を感じるのかもしれません。
 本渡(天草市)に現存する映画館、『本渡第一映劇』もそんな宝物の一つです。戦後間もない昭和20年代に開館し、昭和43年に改築された当時のたたずまいを伝えています。
 蛍光灯の明かりが灯るロビーは、映画が何よりの娯楽だった昭和のころに思いを向けさせます。現在上映中の映画のポスター、お菓子や飲料水が陳列された売店の一角、厚い扉の向こうの真っ暗な劇場に響くホール・エコーと、そのひとつひとつがひどく感覚的で懐かしい感情を呼び起こします。しかしこの映画館が、こうして現存するまでには、さまざまな困難があったと聞きます。


休館した映画館に再び命を吹き込んで
 開館当時は県内でもトップクラスの大劇場でしたが、昭和50年代になると、当時天草に4館あった劇場が次々と閉館していき、同館も平成元年には休館に追い込まれました。そのころ故郷にUターンした、現在の同館代表の柿久和範さん(51)=当時29歳=は、小さいころ親しんだ劇場がなくなるのはさみしいと、経営者に再開の可能性を尋ねましたが、答えはノーでした。
 「しばらくして、僕にこの映画館をやらせてほしいとオーナーに頼みに行きましたが『やめた方がいい』と断られて…。それでもあきらめきれずになんとか3日間だけ貸してもらい、平成3年8月に”天草シネマパラダイス“と題した上映会にこぎつけました。しかし考えてみれば僕は映画のことなど何も分からず、たくさんの人たちの支えなくしては実現しなかったことです」と柿久さんは当時を振り返ります。以来、厳しい環境ながらも柿久さんはこの映画館を守り、平成10年より再出発を果たしました。
 訪れた日は、牛深を舞台にした『女たちの都 ワッゲンオッゲン』が上映されていました。「ここはフィルムだけしか上映できないので、映画会社からデジタル用の上映機器を 借りているんです」と苦労の一面も語ってくれました。
 それでも柿久さんは「日本映画を大切にしたい」と、懐かしい邦画の特集を組んでいます。そんな活動を知った俳優の高倉健さんが、フィルム会社に同館への協力を依頼してくれたそうです。そのご厚意に感謝したいと、2月生まれの高倉さんの誕生日(2月16日)にちなみ、2月23日から3月1日まで高倉さん主演の『2・26事件 脱出』が上演されます。


問い合わせ
■本渡第一映劇
天草市栄町5の23
TEL.0969(23)1417
営/10時〜21時
※上映作品により異なる
休/木曜
http://daiichieigeki.iinaa.net/
 
>> 2 魚もギャグも生きがいい銀天街の陽気な魚屋さん
※各情報は掲載時のものです。料金や内容が変わっている場合もあります。
  あれんじ気まま旅
Vol.69(2013.2.2)掲載
天草市の本渡(旧本渡市)、知らない町なのにとても懐かしく感じる気配。それはきっと、本渡という土地柄が育んだ人情の深さ、温かさからくるものだと思えます。冬本番の季節には珍しく晴れた日に、心がほっこりとなる出会いの数々がありました。

文=福永和子 写真=森賢一(グラフ)
表紙=夕暮れ迫まる本渡第一映劇



心ぬくもる冬晴れの島旅 本渡
あのころの映画館に会えます 昭和の姿そのままの本渡第一映劇
魚もギャグも生きがいい銀天街の陽気な魚屋さん
島民の暮らしの中で育まれた 天草土人形の素朴な風合い
本渡のおしゃれな雑貨店 カフェも要チェック

くまにちコム


このページのトップに戻る↑



掲載の記事、写真の無断複製・転載を禁じます
Copyright Kumamoto Nichinichi Shimbun