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タコ街道に多幸を求めて 有明町

波もなく穏やかな入り江の大浦港。静かなので上空を舞うトビの鳴き声がよく聞こえます


キリシタンの遺物が語る 南蛮文化と信仰の歴史

父親の意志を受けて、キリシタンの遺物を大切に守り伝えている『サンタ・マリア館』の館長・浜崎献作さん
 
「このマリア観音像は、子どもを抱くマリア様と観音様が合体したもので、これには仏教文化が影響しています。おそらく、長年、宣教師不在の信者たちにとって、祈りの対象物の姿が変化したのだと思われます」と浜崎さんが教えてくれました


『サンタ・マリア館』では、十字架、マリア像、燭台など、天草キリシタンが大切にしてきた遺物が400点ほど展示されています
 
大浦港近くにある施設は、8月に国道324号に移転します


かつて南蛮寺だった場所に建立された正覚寺。高僧を住職に迎えて、人々の改宗の拠点とされました
 
本堂の裏には、キリシタンたちの遺物が大切に保管されています


かまぼこ形をしたキリシタンの墓石。正覚寺の本堂の改築のときに発見されたそうです
 
コケむした杉木立の参道を歩けば、山鳥の声が響いて。隠れキリシタンの歴史を思えば、切ない気持ちにかられます


 目の前に有明海が広がる有明町(天草市)。晴れた日には、ここから島原の普賢岳の姿を近くに望むことができます。
 潮騒の音、普段の営みの姿、あちこちに目にするタコの看板…。ゆっくりと心の目を向けると、町の匂いや息づかいが伝わってきます。知っているようで実はよく知らない町。だからこそ、出合いや発見の喜びもひとしおなのかもしれません。
 国道324号を松島方面から有明町に入り右折して行くと大浦港があります。小さな港ですが、船舶のエンジン音やトビの鳴く声がして、のどかな浜の光景が、胸に甘い感情を抱かせます。
 海岸沿いにある、隠れキリシタンの資料を展示する『サンタ・マリア館』を訪れました。十字架やマリア観音像、燭台(しょくだい)など、約400点もある展示物に、祈りによって救われた人々の信仰の深さが伝わってきます。
 「隠れキリシタンの遺物が天草から流出するのを案じた父が、関係者から譲り受けたものを展示する施設として、昭和62年に開館しました」と話すのは、館長で歯科医の浜崎献作さん(68)。
 有明町は、安土桃山時代にはキリシタン布教活動の拠点の一つとされ、外国船が入港し南蛮文化の影響を受けた時代がありました。
 1587年に、豊臣秀吉によるバテレン追放令が下されましたが、あくまで形式的なもので、本格的な弾圧が始まるのは鎖国令が敷かれた江戸時代です。中でも、厳しい税の徴収による困窮や飢餓(きが)に起因した天草・島原の乱(1637年)は、参加した農民がキリスト教をよりどころとしていたことが重大な問題とされました。以来、幕府は天草を天領とし、徹底したキリシタンの摘発と強制改宗を行ったのです。
 上津浦郵便局から山手に上った場所にある正覚寺(しょうかくじ)は、かつて南蛮寺(教会)があった場所です。先の乱により荒廃した天草復興のために着任した代官の鈴木重成は、人々の改宗を目的に幕府直轄の正覚寺を建立し、高僧で実兄の正三(しょうざん)とともに、仏教布教につとめました。
 それでも、厳しい弾圧を耐え忍び、信仰を最後まで捨てなかった隠れキリシタンたち。杉木立ちの参道を上りながら、ここが南蛮寺だったと想像するほどに、ひたむきな祈りへの思いが胸をしめつけます。『サンタ・マリア館』は8月初旬に国道324号沿い(道の駅・リップルランド前)に新設オープン予定で、現在は閉館です。


問い合わせ
■サンタ・マリア館
(8月初旬オープン予定の問い合わせ先)
天草市有明町上津浦美ノ越1940の1
TEL 0969(45)8110
営/9時〜17時
(4月〜11月、12月〜3月は16時まで)
休/なし
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※各情報は掲載時のものです。料金や内容が変わっている場合もあります。
  あれんじ気まま旅
Vol.56(2012.7.21)掲載
「タコの町」として有名な有明町(天草市)。国道324号沿いに点在するそれぞれの集落に分け入ってみると、静かな暮らしに見える文化や、古(いにしえ)から語り継がれてきた歴史など、“旅で見つけるお宝”がたくさんありました。

文=松田有美 写真=森賢一(グラフ)
表紙=内牧温泉郷を流れる春の黒川の風景



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