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誰もが心の故郷として 懐かしがるような町 「津奈木」
山鹿灯籠踊り保存会入会3年目の江上飛鳥さん。「踊りでは、指先をきれいに見せることに気を使いますね。早く先輩のように踊れるようになりたい!」

この煙突の下、杜氏たちが集い、千代の園の酒造りの歴史を築いてきました

真夏の夜を彩る灯籠祭りと 銘酒づくりの伝統

昭和37年まで使われていた大釜と大桶。当時は石炭で釜を炊いていました
 
歴史を刻む千代の園酒造の瓦。みやびやかな瓦の文様に、緑の苔がうっすらと浮かびます
 
史料館の棚を飾るのは、なんと一斗(いっと=18㍑)サイズの大瓶。実用ではなく、ディスプレー用だったようです


左から、『蔵囲い大吟醸(720ml)』2000円、『灯ろうの夢(720ml)』998円、『特別本醸造 冷酒 灯籠娘(300ml)』431円、アントシアニン豊富な紫芋から作ったお酒『ぱーぷる(500ml)』1279円
 
千代の園酒造店舗の格子の先は豊前街道


 夏の抜けるような青空と輝く白雲のコントラストがまぶしいほどに強くなってくると、山鹿っ子が待ちに待った『山鹿灯籠祭り』が近づいてきます。
 ハイライトの千人灯籠踊りは、8月16日の夜、一部と二部に分けて行われ、会場の山鹿小学校グラウンドには、夜がふけるまで“よへほ節”の優雅な調べが流れます。
 よへほ節の「よへほ」とは、「酔いなさい」という意味。誘い文句そのままに、踊り手の頭に載せた灯籠のあかりが幾重にも重なりゆらゆらと闇に浮かぶ光景は、見る者を幻想の世界に酔わせます。
 灯籠踊りの伝統を守るのは、山鹿灯籠踊り保存会(会長・中嶋憲正山鹿市長)。しきたりにより未婚の女性に限られるメンバーは、18歳から30代前半まで現在30人ほど。メンバーの一人、江上飛鳥さん(27)は、生粋の山鹿っ子です。薄紅色の浴衣と緋(ひ)色の帯、そして灯籠を身に着けた飛鳥さんは、匂いたつような美しさです。
 「子供の頃から踊りの中心にある櫓の上で踊ることに憧れていました」と飛鳥さん。はにかむようにふと目を伏せると、ほんのりと目元にさされた紅があざやかに映ります。幼い少女の夢のつぼみが、くれないの大輪となって開花したようなあでやかさでした。
 けれど、優美な踊りを披露するための陰の努力は、並大抵ではありません。メンバーは、それぞれ仕事や家の手伝いなどで多忙ながら、1年を通して週2回の稽古が行われています。互いの息をいつも合わせるために、それだけの稽古がどうしても必要なのです。上げた手の先の高さ、目線を落とすその先の位置。踊り手全員の息がぴたりと合い、あの幻想的な美しい所作が生まれるのです。
 山鹿灯籠踊りの美しさが人を酔わせるのなら、うまい酒も人を酔夢(すいむ)の境地に誘(いざな)います。豊前街道を菊池川に向かうと、雲ひとつない紺碧の空を貫いて真っ白な煙突がそびえていました。歴史ある『千代の園酒造』(同市山鹿)の工場の煙突です。
 「現役当時の姿です。何といってもうちの酒造りのシンボルですから」と誇らしく話すのは、製造部製造係長の志垣道廣さん(46)。千代の園酒造は、酒造りを始める前は大きな米問屋でした。山鹿一帯の米を菊池川を通じて大阪へと送っていました。質のいい肥後米は大阪の米相場を左右するほどの影響力があったとか。
 明治29年から酒造りに転じ、しっかりした味わいの中にさらりとした切れ味を大切にした、千代の園独自の酒造りに心血を注いできました。往年の酒造りをしのぶ史料館の手前にある大釜と大桶は、昭和37年まで酒米を仕込むのに使われていたもの。大人が一人入って両手を広げても余るような大桶も見事ですが、甑(こしき)が載る大釜も、深さ1・5m、直径2・5mと巨大。その大釜に火がくべられると、米を蒸し揚げる蒸気がもうもうと漂い、酒づくりにかける男たちの熱気であふれていたといいます。
 山鹿の米と水、菊池川の流れとともにあった千代の園の酒は、この地の営みを平成の今も脈々と映し続けています。



問い合わせ
■山鹿灯籠踊り保存会
問/山鹿市山鹿978(山鹿市観光課内)
TEL.0968(43)1579


■千代の園酒造
山鹿市山鹿1782
TEL.0968(43)2161
http://www.chiyonosono.co.jp/
>> 2 懐かしさに満ちた商店街 全国のご当地アイスはこの街の工場から発信
※各情報は掲載時のものです。料金や内容が変わっている場合もあります。
  あれんじ気まま旅
Vol.33(2011.8.6)掲載
豊かな平野を横切って悠々と流れる菊池川。豊前街道沿いに点在する往時の面影。千年の昔から知られた豊富ないで湯。山鹿には、粋な文化と歴史の香り、そして、そこに暮らす人々の笑顔と安らぎが満ちていました。

文=松田有美 写真=森賢一(グラフ)
表紙=レトロな香り漂う津留理容館の外観(山鹿市鹿本町の来民商店街)



ゆるやかな時の流れが育む町 山鹿
1 真夏の夜を彩る 灯籠祭りと 銘酒づくりの伝統
2 懐かしさに満ちた商店街 全国のご当地アイスは この街の工場から発信
3 水、野菜、果実… 故郷が育む自然の恵みが パリ気分の一皿に変わる

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