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(1)古民家に響く 哀切なメロディー

山の暮らしを写した写真なども飾られています

(1)古民家に響く 哀切なメロディー

2017年11月4日
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白と黒の縞模様になった岩が、滝のように見えることから名前がついた「白滝公園」。秋は紅葉、冬は壁面に下がる氷柱など、見どころもいっぱい=資料写真

秋は五木村が、一年のなかで最も豊かな彩りに包まれる季節です。川底の石や魚の姿がはっきり見えるほどに透き通る、川辺川とその支流。錦繍(きんしゅう)に染まる山里はどこを歩いても美しく、絵画の世界に迷い込んだようです。

紅葉の名所のひとつ「天狗岩」。名前の由来については、岩の形が天狗の鼻のように見えるという説や、岩の中央に開いた二つの穴に天狗が住んでいたという説もあります=資料写真

そんな、静かに深まる秋景色の中にいると、頭の中に「五木の子守唄」が浮かんできます。

山深く、厳しい自然環境の五木村ではその昔、苦しい家計を助けるために子守奉公に出される娘がたくさんいました。娘たちが奉公先で赤ん坊を背負い歌ったのが、五木の子守唄でした。

子守唄公園(頭地地区)の「茅葺民家」で村の案内人と語り部を務める淀川つるよさん(61)に会いに行きました。淀川さんは白滝公園(小鶴地区)の近くで生まれ育ち、大イチョウで知られる宮園地区に嫁ぎました。幼いころから子守唄を聞いて育ったという淀川さんは、「五木の子守唄」の伝承者のひとりでもあります。

旧水没予定地の川辺川沿い。グランピング(グラマラスなキャンピング)のできる高級コテージや、「森の遊び場」などの建設が進んでいます

川辺川ダムの水没予定地から築130年以上の古民家を移築した「茅葺民家」。語り部が常駐し、五木村の歴史を伝えています

「茅葺民家」で3タイプの子守唄を聞かせてくれる淀川つるよさん。子守唄を生で聞きたい場合は、事前の予約が必要です(問い合わせ/子守唄の里五木 観光案内所)

壁には戦後間もない頃の山の暮らしを写した写真なども飾られています

現在、歌い継がれている五木の子守唄には3タイプのメロディーがあります。2拍子の「正調五木の子守唄」と、そして人吉球磨でも歌われていた4分の3拍子、昭和26年にラジオ放送され全国的に知られるようになった流行歌バージョンがあり、歌詞は約70種類にも及ぶそうです。

淀川さんはそれぞれの「五木の子守唄」を歌ってくれました。

おどま
盆ぎり 盆ぎり
盆からさきゃ
おらんど……

しんと静まり返った古民家に響き渡る歌はどれも、もの悲しく聞こえます。

「“子守唄”といっても、『五木の子守唄』は赤ちゃんをあやすための歌ではなく、奉公のつらさや離れて暮らす家族への寂しさを口ずさんだものなのです」と淀川さん。

故郷をしのび歌う娘たちの姿を思うとせつなさが胸に迫ってきます。

「茅葺民家」の道向かいにある五木温泉「夢唄」。事前に予約すればそば打ちの体験も(1人2200円)

子守唄像のそばのカエデも赤く色づいていました

子守唄公園 茅葺民家

 

五木温泉 夢唄