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(1)小国杉に魅せられ移住 新たな視点で商品開発

小国杉でできたボタンやウッドトレイなど

(1)小国杉に魅せられ移住 新たな視点で商品開発

2017年3月18日
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杖立温泉では毎年4月からゴールデンウイークにかけて鯉のぼり祭りが行われ、杖立川の上空をおよそ3500匹もの鯉のぼりがにぎやかに泳ぎます(資料写真/小国町提供)

阿蘇ミルクロードから国道212号を北へ車を走らせると、大分県との県境にそびえる涌蓋山(わいたさん、標高1500m)が見えてきます。“小国富士”と呼ばれるこの山は、かすみがかった青空のもと、くっきりとした円錐形の稜線を描いています。

小国町のシンボル、涌蓋山。小国富士の通称で親しまれています 立神峡があります

裾野に広がるのは杉の木立です。250年ほど前、細川藩から各戸に25本ずつの杉の苗木が渡されたことで盛んになったと伝えられる小国町の林業。以来、木材の産地として発展し、今も町の面積の74%を森林が占めます。美しく整備された杉山では、強度とつやに優れた良質の小国杉が育ち、全国的に高い評価を得ています。

木材の町らしく、町のあちこちには、太い柱や梁により骨組みされた重厚な造りの町屋が残っています。

この地で生まれた世界的細菌学者・北里柴三郎の生家の一部がある北里柴三郎記念館には、柴三郎が1916(大正5)年に建てた「貴賓館」が当時のままの姿で残されています。柴三郎が帰省時の居室として利用した木造2階建てのこの建物にも、小国杉の大木が使われており、今も頑丈にその姿をとどめています。

「北里柴三郎記念館」。遺品などが常設展示されています

そんな小国杉に魅せられてこの地に移り住んだ女性がいます。小国町森林組合の入交律歌(いりまじり・りか)さん(32)です。入交さんは、九州大学大学院で森林環境について学んだ後、福岡でマスコミの仕事につきました。

「まずは林業の情報発信の方法を学ぼうと思いました」とその理由を語ります。

5年前に小国町に移住した入交さん。同森林組合が、今年1月に立ち上げた「ASO OGUNI-SUGI LAB」設立にも携わり、小国杉の魅力を全国に発信しています。

商品の一つである小国杉を使ったエッセンシャルオイルは、伐採した後、山に放置される枝葉を有効活用しています。

共にオイルの企画販売を手掛けるのが、同組合の渡邉久美子さん(32)。アロマテラピー検定1級の資格を持つ渡邉さんは「九州大学で小国杉の香りが持つ力を科学的に分析した結果、リラックス効果が期待できることがわかりました」とそのオイルの魅力を語ります。森のエキスがぎゅっと詰まったオイルは、杉の葉のさわやかな香りが特長です。

粉砕した杉の葉を釜にいれ、蒸気蒸留をすることで、アロマオイルが採れます(資料写真/小国町森林組合提供)

小国町森林組合の職員により、手作業でボトルに詰められます(資料写真/小国町森林組合提供)

「小国杉エッセンシャルオイル100%」(5ml・単品)で2700円=右端。アロマオイルを数滴垂らして使う小国杉キューブ(3個)がついたディフューザーセット(3240円)も人気。左から2番目はアロマミスト・ラブフォレスト(60ml/3240円)

入交さんが、お気に入りだという森に連れて行ってくれました。杉木立に囲まれた細い山道を登っていくと、そこに現れたのは圧倒されるような杉の巨木群でした。

地元で「250年の森」と呼ばれる森は、その名の通り250年前に植樹された杉が残る数少ない場所の一つなのだそうです。とても厳かな気配に包まれ、しんと静まり返った森の中には木々の精霊がいるように感じます。

「江戸時代に、小国の人の手によって植えられたこの杉を見ると、胸がふるえて。森と人はずっと手を携えて歩んできたんだなって。ここはこの町の歴史を思い起こさせてくれる場所なんです」と入交さん。

小国杉でできたボタンやウッドトレイなど。優しい色合いと温かみのある手触り(資料写真/小国町森林組合提供)

「森ガールというより、林業女子」と笑う小国町森林組合の入交律歌さん(右)と渡邉久美子さん

ASO OGUNI-SUGI LAB(小国町森林組合)